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仙台高等裁判所 平成10年(行コ)2号 判決

仙台市青葉区中央三丁目五番一一号

控訴人

株式会社九重本舗玉澤

右代表者代表取締役

近江嘉彦

右訴訟代理人弁護士

鹿野哲義

中川文彦

佐々木雅康

仙台市若林区卸町三丁目八番五号

被控訴人

仙台中税務署長 福地紀明

右指定代理人

大塚隆治

粟野金順

佐藤富士夫

佐藤正春

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の申立て

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が、控訴人に対して、平成四年一二月二五日付でした平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち、所得金額一億二〇〇三万二六三一円、納付すべき税額三七九三万八七〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。被控訴人が、控訴人に対して、右同日付でした右事業年度の法人臨時特別税の更正のうち、課税標準法人税額四一二五万二〇〇〇円、納付すべき税額一〇三万一三〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

第二事実の概要

本件事案の概要(争いのない事実等、争点及びこれに関する当事者双方の主張)は、原判決「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」に記載のとおり(ただし、原判決四頁四行目の「建物(」の次に「ただし、登記簿の記載による。」を加え、九頁三行目の「仙台」を削る。)であるから、これを引用する。

第三当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の本訴請求は、いずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、次に訂正、付加するほか、原判決「事実及び理由」欄の「第三 争点に対する判断」一及び二項(原判決二〇頁三行目から三五頁九行目まで)説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二〇頁四行目の「二〇」の次に「(一六、一七は各技番)」を加え、二一頁五行目の「土地」を「都市」に改め、二六頁一行目から九行目までを左のとおり改める。

「以上の認定に対し、原審及び当審における控訴人代表者の供述及び甲第一五号証、第一九、第二〇号証中には、交渉の当初から本件借家権に見合う価格を立ち退き料として支払うことをジフコも了解していたかのように述べる部分、若しくは、少なくとも、右交渉前から、控訴人の取締役間で、本件借家権を一億円程度と見積もり、同額程度の立ち退き料控訴人が近江に支払う旨の話し合いをしていたとする部分がある。しかし、ジフコ側で右交渉に当たった原審証人本舘武志は、近江に対する立ち退き料の話が出たことを否定しており、また、当初からそのような話が出ていたのであれば、本件確約書にその旨明記されてしかるべきであるにもかかわらず、前示のとおり、仙台市から予定対価額変更指導の通知を受けてから約一か月後になって作成された本件確約書には、何らその旨の記載がなく、かえって、本件別途支払金の名目は別途協議して定め、これについては秘密事項とする旨が記載されている。さらに、前記のとおり、その作成者や記載内容から、常識的にみて控訴人の求めに応じて作成されたことをたやすく否定し難い本件確約書について、控訴人代表者は、原審では作成経過についても記憶がないなどと甚だあいまいな供述に終始していたことなどに照らし、前記の供述部分は、到底採用することができない(右本件確約書に関し、控訴人代表者は、当審では、一転して、ジフコ側が他の借地人に価額を知られないようにするという理由で同確約書の作成を求めてきた旨弁解するが、そもそも、当審で右のような断定的な弁解を始めるということ自体、その内容の信用性を疑わしめる要素といわざるを得ない。)。」

2  同二九頁六行目の「なっており」の次に、左のとおり加える。

「(本来の法律関係からしても、借地人は、借地上の建物について、自由に他と借家契約を締結し得る反面、借地契約の終了時には、その責任において、借家人との契約関係を終了させなければならないのが原則というべきである。)」

3  同三二頁四行目の「生活に」の次に「多額の補償を根拠づけるだけの目に見える」を、一〇行目の「甲一五」の次に「、一六、一八」を、「乙一四」の次に「、当審控訴人代表者、弁論の全趣旨」を、末行の「木造建物」の次に「(ただし、昭和五四年にほぼ全面的に改造された。)」を加え、三三頁一行目の「六九・八一平方メートル」を「約一三八平方メートル」に、二行目の「五五・八四平方メートル」を「一〇八・七平方メートル」に、四、五行目の「と本件建物において近江が専有していた面積の約二倍以上に及ぶうえ」を「あるほかに」に改め、三四頁六行目の「近江に」の次に「多額の補償を根拠づける」を、末行の「ような」の次に「右合意の存在を強く推認させるべき」を加える。

控訴人は、近江が本件借家権の喪失に見合うものとして、少なくとも、本件別途支払金程度の立ち退き料を取得すべき立場にあったとの観点から、原判決の事実認定及びその評価をるる論難するが、右のとおり、原判決のこの点に関する事実認定自体、訂正部分を除き、基本的に不当な点は認められない上、そもそも、直接的な争点となるのは、控訴人と近江との間で、現に立ち退き料支払の合意があったか否かであり、仮に、控訴人と近江との間になにがしかの立ち退き料の支払があってもおかしくない要素が存するとしても、実際に支払の合意に至らなかった以上、かかる要素の存在が直ちに本件別途支払金支払の性格を左右するものではないといわざるを得ない。

よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する(当審口頭弁論終結・平成一〇年一一月二〇日)。

(裁判長裁判官 武藤冬士己 裁判官 畠中英明 裁判官 若林辰繁)

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